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プラスチック加工における素材の特徴 ~塩ビ(ポリ塩化ビニル・PVC)編~

プラスチック加工でもよく利用される素材「塩ビ(ポリ塩化ビニル・PVC)」とは?

プラスチック加工でよく利用される塩ビは1931年にドイツで工業化されて以来、難燃性耐候性加工性の良さコストの低さといったメリットから普及が進みました。日本での生産は1941年にはじまっています。
塩ビは四大汎用プラスチックとも呼ばれるほど身近な素材であり、わたしたちの身の回りの多くの製品で利用されているので馴染みのあるひとも多いのではないでしょうか。
硬質軟質2つの種類があり、硬質塩ビは配管、看板、サッシ。軟式塩ビは壁紙、チューブ、電線ケーブル、文房具などが主な用途です。  
使いやすい素材なのでプラスチック加工の依頼でもこの塩ビを素材とした製品が数多くあります。(製品事例はコチラ
最近では、石油製品の中でも石油の利用量が少ないことからその環境負荷の低さにも注目が集まっています。

四大汎用プラスチック ・・・ ポリエチレン (PE)、ポリプロピレン (PP)、ポリスチレン (PS)、ポリ塩化ビニル (PVC) 
 

塩ビの長所

難燃性
塩ビは他の汎用プラスチックに比べると燃えにくい「難燃性」という特徴があります。
着火温度が455℃と高く、着火しても火が消えやすいこの性質は火災リスクのある場所での利用に適していると言えるでしょう。

着色やプリント加工のしやすさ
着色やプリント加工がしやすいため多様なデザインを持つ製品が多い特徴を持ちます。
模様やロゴを直接表面にプリントできるメリットは大きく、身近なところでは木目プリントや大理石プリントされた床材、化粧板での利用があります。
印刷により多くのニーズに対応できるため、DIYをするときにも使いやすい素材です。

加工性
切削加工のほかにも曲げ加工、溶接、接着といった加工で使える加工性の高さは塩ビの特徴です。

耐久性
通常の使用環境下であるなら、塩ビは高い耐久性をもちます。
硬質塩ビパイプであれば耐用年数が50年を超え、ドイツでは50年以上たったパイプが新品同様の強度を示したという報告もあります。

透明性
不透明になる配合剤を加えない場合、塩ビは透明性をもちます。
ラップやビニールハウス、パーテーションでの利用があり、軟質、硬質どちらでも製品開発されています。

安価
塩ビは安価に製造できるため経済性が高いです。
塩ビが広く普及している大きな理由の1つです。

塩ビの短所

耐熱性
塩ビは難燃性をもつ反面、常用耐熱温度(一般的な使用方法における耐熱温度)が低いという欠点を持ちます。
塩ビの常用耐熱温度は60~80℃なので熱湯を注いだだけでも柔らかくなってしまうため注意が必要です。

衝撃強度
衝撃強度が低く、とくに低温の時は壊れやすいという弱点をもちます。
耐衝撃性が必要な場合は耐衝撃性を高める配合をした耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル(HIVP)といった製品があります。

塩ビにはさまざまな用途があります。

医療用製品

塩ビは耐久性耐薬品性耐油性に優れていることから医療用製品によく使われています。
薬品を扱う流し台の素材や薬中タンクのような耐久材から血液バッグ、輸液バッグのような消耗品にいたるまで、医療業界では欠かせない素材となっています。

配管

上下水道管をはじめとした配管としてよく利用されています
塩ビはとても丈夫な素材なため上下水道としての耐用年数は50年を超えるなど非常に長持ちです。
耐候性も高いため雨どいのような一年中野外にさらされるような用途にも適しています。

ビニールハウス

農業用のビニールハウスのフィルムとして活躍しています。
透明性や耐久性、耐候性などを持つため外気にさらされる厳しい環境でも力を発揮してくれます

パーテーション

壊れにくい素材として看板に利用されていた塩ビですが、最近では感染対策のためのパーテーションとしての利用も増えています。
アクリル板と違いアルコール消毒が可能なことや難燃性を持つため調理場の近くに設置できることから飲食店を中心に普及しています。

塩ビの環境への影響

塩ビは耐久性の高い製品が多く、塩ビ工業・観光協会によると塩ビ製品の6割以上が15年以上にわたり使われています
上下水道のパイプであれば50年経っても劣化せず、電線ケーブルの被膜や雨どい、床材としての利用でも20年以上もつことからも、その耐久性の高さが伝わるでしょう。
加えて、使用済みとなったあとのリサイクルが活発なことや原料として使われる石油が少ないといった特徴をもつことが環境問題において有利に働くのではと期待されています。

現在ではダイオキシンの発生を大幅に抑えることができます。

塩ビに限らず塩やしょうゆ等塩素を含む物質を低温で燃やすと不完全燃焼をおこしダイオキシンが発生します
以前このダイオキシンの発生が問題となり、塩ビの処理方法が大きな議論となりました。
現在では焼却炉での焼却のさいに700℃以上の高温でゴミを燃やすことによってダイオキシンの発生が大幅に抑えられています
処理過程で発生したダイオキシンを含んだ排ガスも適切に処理しており、フィルターで除去するなどの方法で大気への放出を防いでいます。

組成の約6割が塩由来である塩ビは環境負荷が低いです。

プラスチックの多くは組成のほぼ100%が石油由来の物質で生成されます。しかし、塩ビは約6割が塩由来の塩素であり石油は4割ほどしか使用しません
この石油消費の少なさや耐久性が高く長持ちする塩ビの性質のおかげで環境に与える負荷が少ないと言われています。
SDGsやサスティナブルなど消費の持続可能性が重要視される現在においてこうした塩ビの特性は注目されています。

リサイクルしやすいため最後までムダなく活用できます。

劣化が少なく耐久性のある塩ビはリサイクルやリユースも盛んです。
リサイクルには、使用済みのプラスチックを溶かして同じ製品や別のプラスチック製品としてよみがえらせる「マテリアルリサイクル」、熱分解して新たな化学物質に変えることで再利用する「フィードストックリサイクル」、燃料として発電に利用する「エネルギーリカバリー」があります。
こうして使用済みとなった後も資源として有効活用されている塩ビは非常にエコな素材と言えるでしょう。

ロンドンオリンピックでは大会の設備や装飾に塩ビ製品をつかうことによって、大会終了後のリユースやリサイクルをしやすくしたので、使用済みとなった製品の多くが再利用されました。
海洋プラスチックが問題となっている中、リサイクルによるプラスチックの再利用はますます重要となっています。

まとめ

塩ビの特徴や利用例についてご説明させていただきました。
塩ビ製品はわたしたちの身の回りでさまざまな活用をされているだけでなく、最近では環境負荷の低さにも注目が集まっています。
さまざまなメディアで「SDGs」や「サスティナブル」、「持続可能性」といった言葉を耳にすることも多くなってきました。
こうした中、塩ビのエコな側面がこれからの開発でどう活かされていくのかに期待が高まります。

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