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樹脂化とは 〜金属部品からプラスチック部品への置き換え完全ガイド〜

製造業の経営者やご担当の皆様にとってコスト削減は永遠のテーマですよね。
人件費や材料費など、さまざまなコストを削減しようと試みているかと思いますが、意外と見逃されがちなのが部品の素材の見直しです。

技術の進歩で高性能のプラスチック素材が増えたことにより、長年使ってきた金属部品を高機能なプラスチックに置き換える「樹脂化」がいま注目を集めています。
たった1つの部品を変えるだけで製造コストや輸送コストに大きな影響を与える可能性もあります。  

この記事ではそんな樹脂化について、知識のない方にもわかりやすく解説しています。  

樹脂化とは?

樹脂化とは、これまで金属で作られていた部品をプラスチック(樹脂)に置き換えることです。
現代ではエンジニアリングプラスチックのような高機能なプラスチックが多数開発されており、強度や耐熱性で要求性能を満たし、金属部品を置き換えることが可能となっています。

プラスチック(樹脂)化のメリット

  1. 軽量化: プラスチックは金属に比べて格段に軽い素材です。部品が軽くなると、製品全体の重量も軽くなり、自動車の燃費向上や輸送コストの削減に繋がります。
  2. 防錆性: プラスチックは基本的に錆びません。そのため、錆びやすい環境で使用される部品(水回りや屋外など)に最適です。
  3. 着色: 着色することで塗装が不要になります。これにより、塗装コストや手間を省くことができます。
  4. 耐薬品性: 薬品に強いプラスチックも多く、化学工場などで使用される部品にも適しています。
  5. 絶縁性: プラスチックは電気を通さないため、電気部品の絶縁体として非常に優れています。

一体成形によるコスト削減

一体成形は、樹脂化の大きなメリットです。金属では溶接やネジ止めで複数の部品を組み合わせる必要があった形状もプラスチック加工なら1度に作ることが可能です。
これにより部品数を減らせるため組み立てやメンテナンスにかかるコストを削減できます。

あなたの会社で置き換え可能な部品を見つける5つのステップ

でも、うちの製品に置き換えられる部品なんてあるのかな?」とお悩みの方も多いと思います。
そんな方のために樹脂化可能な製品を見つけるガイドラインをご用意しました。
以下の5つのステップで、置き換え可能な部品を見つけ出しましょう。

【ステップ1】機能要件の洗い出し
まずは、その部品に「絶対に欠かせない機能」をリストアップしてください(例:「強度が必要」「熱に強い必要がある」など)。
この要件を満たせるプラスチック素材を探しましょう。

【ステップ2】「軽量化」のメリットを考える
その部品を軽くすることで、製品全体の性能(例:自動車の燃費、ロボットアームの動作速度)や、輸送コストにどのような影響があるか考えてみましょう。

【ステップ3】「複雑な形状」の部品を探す
複雑な形状の金属部品は、加工に非常に手間がかかり、コストが高くなりがちです。
射出成形が得意なプラスチックなら、複雑な形状も安価に作れます。

【ステップ4】「耐食性」が必要な部品か確認する
錆びやすい環境で使われている部品は、プラスチックに置き換えることでメンテナンスの手間を大幅に減らすことができます。

【ステップ5】「複数部品の統合」を検討する
複数の金属部品を組み合わせている箇所はありませんか?
それらを1つのプラスチック部品にできないか検討してみましょう。

樹脂化に失敗しないための注意点

樹脂化には多くのメリットがありますが、もちろん注意点もあります。

  1. 寸法安定性が低く精度は金属に劣る:
    プラスチックは温度変化で膨張・収縮しやすいため、高精度が求められる部品には向かない場合があります。

    • 対策: 精度の高いプラスチック素材を選んだり、設計段階で熱収縮を考慮した工夫が必要です。
  2. 機械特性で劣る:
    一般的に、プラスチックは金属に比べて強度や耐久性が劣ります。

    • 対策: 高強度なエンジニアリングプラスチックスーパーエンジニアリングプラスチックを選定することで、金属に匹敵する性能を出すことができます。
  3. 試作を重ねる:
    いきなり大量生産するのではなく、必ず試作品を作って、強度や性能を十分に検証することが大切です。

まとめ

金属をプラスチックに置き換える「樹脂化」について解説しました。
樹脂化は軽量化やコストダウン、プロセスの効率化など多くのメリットがありますが、プラスチックならではの弱点もあるので樹脂化の際は検証を重ねることが大切です。